国際力動的心理療法学会の年次大会では、本学会共同創立者の故エドワードL ピニー博士を記念し、毎大会、博士の名を冠した講演を行っております。今大会では、拡大版としてエドワード・ピニーを記念した特別ワークショップを開催します。
特別ワークショップは、大会テーマ「変化の時̶現代人はいつ大人になるのか?」を起点に、2 つの目的にむけて行われます。第 1 の目的は、心理療法の面接場面において、セラピストはどのように変化の時(瞬間)に立ち会うことができるのか、そして変化を生み出すためにどのような介入ができるのかを浮き彫りにすることにあります。
第 2 の目的は、青年期から成人期への発達の現代的な困難さと必要な課題を浮き彫りにすることにあります。
当日は、3 人のマスターセラピスト・アナリストの先生に、聴衆の前で有志のクライアントに対する心理療法・精神療法の面接を実施していただき、そのプロセスを振り返っていただきます。その後のディスカッションを通じて、1)変化の時に立ち会い、介入するために必要な態度・技法、および、2)青年期から成人期への発達の困難さのノーダル ポイントとそれを超えるための課題、を明らかにします。
当日面接をしていただく 3 人のマスターセラピスト・アナリストにつきましては、国内外からトップの臨床家にお願いをし承諾を得ました。国内外のトップの先生方にお集まりいただき、実際の力動的心理療法・精神療法の面接をライブで見て、そこから力動理解・技術・態度を学べる、またとないチャンスです。IADP の年次大会においても、このよう な機会はなかなかありません。
ベテランの臨床家の方々にはディスカッションに参加していただき、学ぶだけでなく新 たな智を生み出す試みに参加していただければと思います。また、初心の臨床家や訓練生の方々にはトップの臨床家 の臨床に触れて、生きた臨床の面白さを感じ、ドキドキする体験をしていただければと思います。
マスターセラピスト
セス・アロンソンPsy.D. (ウィリアム・アランソン・ホワイト研究所トレーニング・ディレクター)
同研究所児童・青年期心理療法訓練プログラムにおいて訓練・スーパーヴィジョンに取り組む。アメリカ心理学会39 分科会セクション 2(児童青年期)の無任所委員。ロングアイランド大学非常勤教授。イェシーバー・ホベベイ・ トーラー(Yeshivat Chovevei Torah)においてラビ学生へのプロセスグループのリーダーを務める。アメリカ集団精 神療法学会フェロー。
牛島 定信 M.D. (ホヅミひもろぎクリニック院長)
九州大学医学部卒業。ロンドン大学精神医学研究所留学。福岡大学医学部教授、東京慈恵会医科大学教授、東 京女子大学教授、日本精神分析学会会長、日本森田療法学会理事長、日本サイコセラピー学会理事長、日本児童青年精神医学会理事長を歴任。人格障害、青年期の精神病理の解明および力動的精神療法の実践、研究をリードしてこられた、日本を代表する精神分析医であり、精神分析的精神医学に最も貢献してこられたお一人である。
小谷 英文 Ph.D. (PAS心理教育研究所理事長)
国際力動的心理療法学会共同創立者、現理事長。アデルファイ大学ダーナー高等心理学研究所、ニューヨーク大学医学部卒後集団精神療法コースで訓練を積む。困難患者とされる人々への心理療法・集団精神療法が専門。1970 年代アメリカの現代精神分析とシステムズ理論を持って帰国し、精神分析的システムズ理論(PAS 理論)を打ち立て、現在に至るまで臨床・研究・理論構築を一体に常に取り組み続けている。
コメンテーター
ラルフ・モラ Ph.D.(個人開業/メリーランド大学)
アデルファイ大学において臨床心理学の博士号を取得。アメリカ陸軍戦略大学およびテキサスA&M 大学において 卒業研究を完成させた。長年、兵士の PTSD 治療、戦地に向かう軍人・兵士の子どもたちへの心理的対応、子どもの PTSD 治療に精力的に取り組んでいる。2014 年にアメリカ国防総省での仕事を引退し、現在はメリーランド大学の非常勤教授を務め、また山口県岩国市にて個人開業を行う。